変形性股関節症|股関節の痛みと動きを改善するストレッチ

股関節の痛みや違和感に悩んでいる方は多い。

歩くという日常動作は、健康な人にとっては当たり前のことでも、股関節に痛みを抱えている人にとっては不安や恐怖を感じてしまう。

変形性股関節症は、股関節の痛みだけでなく、股関節の動きにも支障がでる。

その結果、歩く姿勢、腰痛、膝痛などいろいろな影響がでてしまう。

ここでは、変形性股関節症と診断されて悩んでいる人、いろいろな治療を試したが改善しない人に、股関節の痛みと動きを改善するための方法をご紹介します。

目次

1. 変形性股関節症とは

 変形性股関節症とは、股関節の軟骨がすり減ったり、股関節の周囲の骨や滑膜組織の変化によって発症する変形性関節症です。

変形性股関節症は、40〜50歳の女性に多く、痛みがでたり、股関節の動きに支障がでてきます。

日本における変形性股関節症の有症率と発症年齢

単純X線診断によるわが国の有病率は1.0~4.3%で,男性は0~2.0%,女性は2.0~7.5%と女性で高い
(Grade B)

変形性股関節症の発症年齢は平均40〜50歳である(Grade B)

変形性股関節症の診療ガイドライン2008

2. 変形性股関節症の症状

変形性股関節症の主な症状には以下のようなものがあります。

  • 股関節や股関節の周囲の痛み
  • 骨盤の高さや足の長さの違いなど外見上の変化
  • 歩き方の変化
  • 腰や膝の痛み

2−1. 股関節や股関節の周囲の痛み

初めは歩き始めや立ち上がる時、階段の昇り降りで股関節に痛みを感じます。

その後、長い距離を歩いたり、重い物を持ったりしても痛みがでてきます。

痛みがひどくなると寝ている時や、座っている時など安静にしていても痛みを感じる人もいます。

2−2. 骨盤の高さや脚の長さの違いなどの外見上の変化

変形性股関節症は、痛みの他に股関節の動きに支障がでてきます。

股関節がスムーズに動かなくなり、引っかかり感や違和感を感じるようになります。

動きに支障がでてくると、骨盤の高さや、脚の長さが変わるなど、外見上に変化が出てきます。

2−3. 変形性股関節症による歩き方の変化

骨盤の高さや、足の長さが変わるなど変形性股関節症の症状が進行してくると、股関節の動きが十分機能しなくなります。

股関節の動きや痛みをかばって歩くために不自然な歩き方(跛行)になります。

変形性股関節症による跛行

  • 歩く時、骨盤を同じ高さに保つことができない(トレンデレンブルグ徴候)
  • 歩く時、上体を横に傾けて歩く(デュシェンヌ徴候)
  • お尻を突き出した前傾姿勢で歩く

2−4. 変形性股関節症と膝や腰の痛み

股関節の痛みをかばって生活を続けていると腰や膝などにも影響がでてくるケースもあります。

逆に、腰や膝が痛くて病院に行くと股関節に問題が見つかることもあります。

変形性股関節症と関連の可能性がある診断名

  • 腰部椎間板ヘルニア
  • 座骨神経痛
  • 腰椎すべり症
  • 脊柱管狭窄症
  • 変形性膝関節症など

変形性股関節症は膝関節のアライメント異常や変形性膝関節症の進行に関与する(Grade B)

変形性股関節症の診療ガイドライン2008

3. 変形性股関節症の原因

変形性股関節症は原因が特定できない「一次性変形性股関節症」と画像検査などで原因が特定できる「二次性変形性股関節症」があります。

3−1. 一次性変形性股関節症

一次性変形性股関節症とは、画像所見などで股関節の異常が見られず、はっきりと原因が特定できない変形性股関節症のことをいいます。

肥満やスポーツ、職業(重量物の作業従事者)、遺伝などが変形性股関節症の発症と関係があるとされていますが、明確な関係性は見出だされていません。

 3−2. 二次性変形性股関節症

原因がはっきりしている変形性股関節症を二次性変形性股関節症といいます。二次性変形性股関節症の主な原因としては以下のようなものがあります。

  • 臼蓋形成不全
    太ももの骨を受ける骨盤側の骨のかぶりが浅く、股関節が不安定な状態
  • 発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)
    乳児期から幼少期にかけておきた股関節の脱臼による後遺症

4. 変形性股関節症の治療方法

変形性股関節症の治療法には、運動療法や薬物療法などの保存療法と、手術療法があります。

4−1. 運動療法

筋力アップのためのトレーニングや、ストレッチ、水中歩行など、運動療法が痛みの改善や機能障害の改善に役立つということが多くの研究や統計により明らかになっています。

しかし、運動療法の内容や期間、頻度といったものは不明で、どれが一番効果があるかなどはわかっていません。

4−2. 薬物療法

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症剤)やアセトアミノフェンは変形性股関節症の痛みを和らげるのには有効な手段です。

しかし、慢性疾患の変形性股関節症に使用する場合は肝機能・腎機能障害などの副作用も考えた上で使用する必要があります。

4−3. 手術療法

変形性股関節症の手術は、適応年齢や症状の進行状態で異なります。

自分の骨を残したまま行う関節温存療法と軟骨や骨を切除して人工の関節に換える人工股関節全置換術があります。 

5. 変形性股関節症の痛みと動きを改善するストレッチ

レントゲンなどの画像上の進行度合いと股関節の痛みの強さは比例しません。

変形性股関節症は初期段階で激痛を感じる人もいれば、末期段階でも痛みがほとんどない人もいます。

画像上の変形性股関節症≠痛み です。

詳しくはこちらの記事をお読みください。
変形性股関節症の原因【股関節が痛い本当の理由】

変形性股関節症の痛みの改善には、運動療法が有効というエビデンス(科学的根拠)があるように、筋肉にアプローチすることが痛みを改善する糸口になります。

骨は痛みを感じることができません。

骨が痛みを感じるのではなくその周辺の筋肉が痛いのです。

5−1. 変形性股関節症改善ストレッチ の目的

痛みや違和感を感じるところの筋肉は硬く緊張しています。

緊張とは筋肉が収縮している状態です。

つまり、痛みを感じる場所の筋肉は無意識に力が入っています。

痛みをかばったり、体のバランスを保つために常に無意識に力が入っているのです。

筋肉のコリや張りも同じ状態といえます。

この無意識に力が入った状態の筋肉を緩めることで、変形性股関節症の痛みや股関節の動きを改善することができます。

筋肉の力を抜き、緊張を緩めるためには、心身ともにリラックスすることが重要です。

痛みを伴うストレッチ無理やり伸ばすストレッチは逆効果になるのでご注意下さい。

5−2. 変形性股関節症のストレッチ

ここでは、筋肉の緊張を緩め、筋肉を本来の状態に戻すためのストレッチをご紹介します。

股関節が痛い場合、いきなり股関節のストレッチをするよりは、少し離れたところから始めた方が効果的です。

股関節の痛みは、腰や膝にも影響するという話をしましたが、股関節の痛みと腰や膝の痛みは連動します。

つまり、腰や膝周辺の筋肉からアプローチすることで、股関節の筋肉も間接的にアプローチすることができます。

氷を周りからゆっくり溶かしていくイメージです。

STEP1 リラックスできる環境

感情が高ぶって興奮している状態では筋肉も緩んでくれません。

落ち着ける場所、時間帯を選んでください。

また、ストレッチを始める前やストレッチの合間、ストレッチが終わった 時に深呼吸をして気持ちと体を落ち着かせて下さい。

股関節の筋肉を緩めて痛みと動きを改善するためのストレッチです。

痛くなるかも、痛くなりそうと思っただけで体に力が入り筋肉は緊張してしまいます。

その力が入った状態で筋肉を無理に伸ばそうとすればするほど症状は悪化してしまいます。

心の緊張は体を緊張させます。

ゆっくりと呼吸することで心の緊張が緩めば、自然に筋肉も緩みます。

注:深呼吸は体の力が抜けるのをイメージしながら、ゆっくり吸いたいだけ吸って、吐きたいだけ吐いて下さい。

STEP2 足首や腰を動かす

足首をまわしたり、腰を曲げたり伸ばしたりしてゆっくり動かして下さい。

立ちながら、座りながら、寝ながらなど、楽な姿勢でおこなってください。

足首、腰の筋肉を軽く暖める感じでウォーミングアップを行います。

はじめは足首をまわしただけで股関節が痛かったり、うまくまわせないと思います。

股関節の筋肉を緩めるのが目的ですから、大きくまわす必要はありません。

痛みのでない範囲でゆっくり動かしてください。

これだけでも痛みは楽になります。

楽にならない人は体に力が入っています。

ゆっくり呼吸をして体の力を抜いてからもっと軽く動かしてください。

STEP3 お尻と太ももの筋肉を動かす

股関節の痛みに特に影響するのが、大殿筋、中臀筋などのお尻の筋肉と、大腿四頭筋などの太ももの筋肉です。

仰向けに寝るストレッチ 1

仰向けに寝て、脚を伸ばした状態でつま先を内外にそれぞれゆっくり倒します。

この動作を痛みの無い範囲で何回か繰り返します。

倒れるところまで力を入れて倒すのではなく、ゆらゆら揺らすイメージでも大丈夫です。

股関節が痛い側と痛くない側で倒れる角度や倒す感覚が違うと思います。

股関節が痛くない側からはじめて、力の入れ方や感覚を覚えてから反対側をおこなうといいでしょう。

仰向けに寝るストレッチ 2

次に、仰向けに寝ながら、片膝を90°に立てます。

立てた膝をゆっくり内外に倒します。

これも、限界まで倒す必要はありません。

膝をゆらゆら揺らすイメージで何度か繰り返します。

内側に膝を倒すと痛い人は外側に倒すだけでもかまいません。

うつ伏せに寝るストレッチ

脚を伸ばしてうつ伏せに寝たら、片膝を90°に曲げます。曲げた脚をゆっくり内外に倒します。

この動作を痛みの無い範囲で何回か繰り返します。

これも、股関節に痛みのない側からはじめて、感覚を覚えてください。

倒すというよりは、力が抜けて自然に倒れていくという感覚です。

最後に、体全体の力を抜くイメージで深呼吸をして終了です。

倒す回数や倒す速度は、心地よいと感じるくらいで行って下さい。

目安としては10回くらいで十分です。

STEP4 ストレッチを行う上でのポイント

このストレッチは、痛いところを体や脳に認識させるために、股関節の痛くなる場所に手を当てながら行います。

そっと添えるだけでOKです。

また、筋肉を緩みやすくするために深呼吸をしながら、または、合間に深呼吸を入れながらストレッチを行います。

股関節周りの筋肉が緩んでくれば、つま先や、膝の倒れる角度がだんだん広がっていきます。

倒れる範囲が広がるにつれて痛みは改善していきます。

これは、無理やり筋肉を曲げ伸ばしするものではありません。

ゆっくり動かすことによって緊張した筋肉を緩めるためのストレッチです。

無意識に筋肉に入った力を意識的に抜くということを忘れずに行って下さい。

注:今回は寝た状態でできるものをご紹介しましたが、同じように、椅子に座ったままでも膝を内外に動かしながら筋肉の緊張を緩めることができます。 

最後に

股関節は歩くための重要な役割をもった関節です。

股関節が痛いと外出するのも嫌になり、家の中に引きこもりがちになってしまいます。

体は適度に動かさないと動かなくなってきます。

痛い、動かないの悪循環になる前にケアすることが大切です。

あなたが股関節の痛みと動きを改善して、一日でも早く快適な生活を取り戻すことを願っています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次