「痛いなら、少し体重を落としなさい」

整形外科の診察室で、レントゲン写真を見ながら先生にそうバッサリと言われたとき、胸の奥がキュッと締め付けられるように傷ついた経験はありませんか?
「痩せなきゃいけないことなんて、自分が一番よく分かっている」
「でも、足の裏が痛くて一歩を歩くのも辛いのに、どうやって運動して痩せればいいの?」
お医者さんにとっては、何気ないアドバイスの一つだったのかもしれません。
しかし、痛みに耐えながらなんとか病院に足を運んだあなたにとっては、まるで「痛いのは自己管理ができていないあなたのせいだ」と責められたように感じられたのではないでしょうか。
それだけではありません。40代から60代を迎える時期は、女性の体も心も、そして生活環境も、人生の中で一番激しい変化の波にさらされるときです。
「足の裏がジンジン、ピキピキして、靴下が触れるだけでも不快」
「立ち仕事が辛くて本当は辞めたい。でも、生活や家族のことを考えると、簡単には休めない……」
そんな風に、誰にも言えない辛さを抱え、痛む足を引きずりながら毎日を必死に乗り切っているあなたへ。
あなたの踵(かかと)の痛みが長引いているのは、決して体重のせいでも、あなたの我慢が足りないからでもありません。
今日は、医学的な病名だけでは決して見えてこない、「女性のライフステージ」と「長引く痛みの本当の関係」を、最新の科学の視点からわかりやすく紐解いていきます。
なぜ「体重」だけが原因ではないと言い切れるのか?
まず、あなたに一番にお伝えしたいのは、「体重が重いから足底腱膜炎になる」というのは、慢性痛の世界ではすでに古い常識になりつつあるということです。
もし本当に体重だけが原因なら、世の中のふくよかな方全員が足の裏の激痛に悩んでいなければおかしいですし、逆にスマートな方は誰も足底腱膜炎にならないはずです。しかし、実際はそんなことはありませんよね。
「体重のせい」と言われると、私たちは「自分の体が壊れていく重荷になっている」と悲しくなってしまいます。しかし、長引く痛みの正体は、足の裏にかかる物理的な重さだけではないのです。
では、なぜこの年代の女性に、これほどまでに踵や足の裏の痛みが多発するのでしょうか。そこには、女性の体に訪れる「ある大切な変化」が関係しています。
40〜60代女性の体に起きる「潤いの変化」と神経の過敏化
この年代の女性の体を支えるうえで、切っても切り離せないのがホルモンバランスの変化(更年期)です。
女性ホルモン(エストロゲン)には、実は「筋肉や腱、靭帯のしなやかさを保つ」という大切な役割があります。更年期を迎え、このホルモンが減少してくると、全身の組織が少しずつ硬くなりやすく、潤いが不足した状態になります。
足の裏のクッションである足底腱膜も例外ではありません。
さらに、ホルモンの変化は自律神経の乱れを引き起こします。自律神経が乱れると、脳は「身体がピンチだ!」と勘違いし、痛みを感じる神経のセンサーをいつもよりピリピリと過敏にさせてしまうのです。
あなたが「足の裏がジンジンする」「日によって痛みが変わる」と感じているのは、足の裏の組織がボロボロに傷ついているからではなく、ホルモンと自律神経の変化によって、神経がいつもより敏感に痛みをキャッチしやすくなっているからなのです。
「立ち仕事を辞めたい、でも休めない」その責任感が痛みを大きくする
最新の痛み治療の基準である「BPSモデル(生物・心理・社会的モデル)」では、痛みを長引かせる最大の要因として、その人が置かれている「環境やストレス(社会的要因)」を重視します。
40〜60代の女性は、本当に多忙です。 職場で責任のある立ち仕事を任されていたり、パートタイムで何時間も立ちっぱなしで働いていたり。
家に帰れば、休む間もなく夕飯の支度をし、家事をこなし、中には親の介護や子供のサポートに追われている方もいます。
「足の裏が激痛で、本当は今すぐ座り込みたい」
「この仕事を辞めて、ゆっくり足を休ませたい」
そう心の中で悲鳴をあげていても、「私が休んだらみんなに迷惑がかかる」「生活のために働かなければいけない」と、痛みをグッと堪えて、毎日笑顔で頑張り続けてしまっていませんか?
実は、この「本当は辞めたい(休みたい)、でも休めない」という精神的なプレッシャーや脳の疲労そのものが、足の裏の神経をさらに興奮させ、痛みを長引かせる最大の原因になっているのです。
脳は、ストレスや心の負担を感じると、「これ以上頑張ったら身体が壊れてしまう!」と、あなたを強制的にストップさせるために、踵の痛みの警報(火災報知器)をわざと大音量で鳴らし続けます。
あなたの踵の痛みは、これまでずっと一人で頑張り、周りを支え続けてきたあなたの心と体が発している、「お願い、少しだけ私を労って」という健気なサインなのです。
傷ついた脳と心に、「安心」を届けるということ
「体重のせい」と言われて傷つき、「休めない環境」に追われ、痛みの恐怖で頭がいっぱいになってしまう……この悪循環の中にいる限り、いくら足の裏に高級なインソールを入れても、患部を強くマッサージしても、痛みはなかなか変わりません。
なぜなら、脳の警戒モードが解けていないからです。
当院が何よりも大切にしているのは、まずあなたが抱えているその「辛さ」や「生活の背景」を、否定せずに丁寧にお伺いすることです。
「これまで本当に頑張ってこられたんですね」 その一言に心がホッとし、「痛みの原因は自分のせい(体重)ではなかったんだ」と深く納得できたとき、脳の過剰な警報はそれだけで少し静まり始めます。
施術では、立ち仕事で疲弊し、緊張しきった全身の神経系を優しく包み込むような、触れるだけの心地よいアプローチを行います。強い刺激で脳を脅かすことは一切ありません。
「私、もう少し自分の体を大切にしていいんだ」
そう自分に許可を出せたとき、あなたの踵は、本来の健やかさを取り戻し始めます。
朝、すっと軽やかにベッドから足を踏み出せる喜び。
立ち仕事の帰り道、夕飯の買い出しに寄るのが苦じゃなくなる日々。
休日に、痛みを気にせずお友達と心からおしゃべりを楽しめる時間。
あなたはこれまで、十分に周りのために頑張ってこられました。
これからは、ほんの少しだけ、あなた自身の体を温かくケアしてあげる番です。その第一歩を、私はいつでもここで、心を込めて支えています。
