【最終回】薬も手術もいらない?
脳のシステムを書き換える「BPSアプローチ」
なぜ、あなたの痛みは今まで治らなかったのか?

「手術で骨を削ったのに、痛みが消えない」
「強い痛み止めを飲んでも、薬が切れると元通り」
「電気治療やマッサージを受けても、その場しのぎにしかならない」
第1回、第2回の記事を読まれたあなたなら、もうその「理由」がわかっているはずです。 あなたが受けてきた治療はすべて、「火元(構造・Bio)」に対するアプローチでした。
しかし、実際の火事はすでに消えていて、鳴り続けているのは「警報システム(脳・中枢)」だったのです。 誤作動している警報機に水をかけても(手術)、ペンキを塗っても(湿布)、警報音(痛み)は止まりません。
こんにちは。慢性痛専門の整体院「痛み回復センター東京」の早坂秀一です。 シリーズ最終回となる今回は、暴走した脳のシステムを鎮め、あなたを痛みから解放する世界標準の解決策「BPSアプローチ」について解説します。
世界の常識「生物心理社会モデル(BPS)」とは?
現代の疼痛治療において、痛みを「骨や筋肉(Bio)」だけで説明することは、もはや時代遅れです。 国際的なガイドラインでは、痛みを以下の3つの要素が絡み合った結果として捉えます。
【BPSモデルの3要素】
Bio(生物的要素):筋肉の緊張、神経の炎症、関節の動きの悪さなど。
Psycho(心理的要素): 不安、恐怖、うつ、「もう治らない」という思い込み(破局的思考)。
Social(社会的要素): 仕事のストレス、家庭環境、経済的な不安、孤立。
なぜ「構造」だけでは治らないのか
前回のFinan論文で証明された通り、慢性痛の主犯は「中枢性感作(脳の過敏さ)」です。 この「過敏さ」を作り出している燃料こそが、Psycho(不安)やSocial(ストレス)なのです。
病院の手術や薬は、「Bio」のわずかな部分(骨の形など)しか変えられません。 脳の過敏さを煽っている「不安(Psycho)」や「ストレス(Social)」が放置されたままでは、システムエラー(中枢性感作)は絶対に解除されないのです。
「知ること」が最強の治療薬である
では、どうすれば「Psycho(心理)」や「Brain(脳)」にアプローチできるのでしょうか? その最も効果的な方法の一つが、あなたが今まさに行なっている正しい知識を知ることなのです。
ペインデュケーション(PNE)の科学的根拠
専門用語で「疼痛神経科学教育(Pain Neuroscience Education:PNE)」、当院では「ペインデュケーション」と呼んでいます。 これは、「痛みの正しい仕組み」を患者さんが理解することで、脳の恐怖心を解き、痛みを軽減させる治療法です。
「話を聞くだけで治るわけがない」と思いますか? こちらの論文をご覧ください。
【PNEのエビデンス】
The effect of neuroscience education on pain, disability, anxiety, and stress in chronic musculoskeletal pain.
Louw A, et al. (2011)
研究結果:慢性痛患者に対し、「痛みの生理学(脳の仕組み)」を教育するセッションを行った結果、以下の効果が実証されました。
痛みの軽減:脳の興奮が鎮まり、痛みが弱まった。
機能の向上:体が動くようになり、活動量が増えた。
不安・ストレスの低下: 破局的思考(恐怖)が消えた。
つまり、あなたがこの全3回の記事を読み、 「なーんだ、私の痛みは骨が壊れているからじゃなくて、脳が勘違いしているだけなんだ」 と深く理解(納得)したその瞬間、あなたの脳内ではすでに「鎮痛物質」が分泌され、システムのリセットが始まっているのです。
当院のアプローチは、単なる整体ではありません。 この医学的エビデンスに基づいた「ペインデュケーション」を、施術の根幹に据えています。
脳を「書き換える」ステップ
しかし、知識(理論)だけでは不十分なこともあります。 頭では「怖くない」と分かっていても、いざ動こうとすると体がすくんでしまう…。 それは、脳の深い部分(本能)に「痛みへの恐怖記憶」がこびりついているからです。
ここからは、「理論」を「体験」に変え、脳を完全に書き換えるフェーズです。
脳は「言葉」よりも「体験」を信じる
自転車の乗り方を本で読んでも、乗れるようにはなりませんよね? 脳のシステム修正も同じです。 「安全だよ」と言い聞かせるだけでなく、「ほら、動いても痛くないでしょ?」という「成功体験」を体に覚え込ませる必要があります。
【脳書き換えの3ステップ】
- 【理解(PNE)】:まず、この記事のように「痛みの仕組み」を正しく理解し、恐怖のブレーキを外す。
- 【露出(Exposure)】: 恐る恐るではなく、専門家のサポートの元で「少しずつ動く」リハビリを行う。
- 【上書き(Override)】:「動けた!」「痛くない!」という情報を脳に入力し、古い「痛みの記憶」を新しい「成功の記憶」で上書きする。
当院が提供する「BPSアプローチ」
当院の施術は、ただ寝て揉まれるだけのリラクゼーションではありません。 あなたの脳に「安全信号」を送るための、能動的なセッションです。
- Bioへのアプローチ: 筋肉の緊張を解き、スムーズな動きを取り戻す。
- Psycho/Socialへのアプローチ: 不安を取り除き、自信(自己効力感)を育てる。
- Brainへのアプローチ: 「痛くない動き」を反復し、脳のボリューム設定を正常に戻す。
これら全てを統合したのが、当院の「BPSアプローチ」なのです。
あなたは、治る力を持っている
全3回にわたり、長々とお付き合いいただきありがとうございました。 最後に、あなたに伝えたいことがあります。
「中枢性感作」や「脳の誤作動」という言葉を聞いて、「私の脳は壊れてしまったのか」と悲観しないでください。 むしろ逆です。 脳には「可塑性(かそせい)」という、変化する力が備わっています。
悪い方向に学習してしまった(過敏になった)のなら、良い方向に再学習(リセット)することも、必ずできます。 エビデンスが示す通り、構造(骨)がそのままでも、システム(脳)が変われば、あなたはまた笑って歩けるようになるのです。
「知る」から「変わる」へ。最初の一歩を踏み出そう
あなたは今、「痛みの地図(理論)」を手に入れました。 あとは、その地図を持って「回復への道(実践)」を歩き出すだけです。
「頭ではわかった。でも、一人で実践するのは怖い」 「私の脳のクセを、専門家に見てほしい」
そう思われたなら、ぜひ一度、当院のドアを叩いてください。 私があなたの脳の「安全ガイド」となり、卒業まで伴走します。
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本記事の参考文献(Scientific Evidence)
- Louw A, Diener I, Butler DS, Puentedura EJ. (2011). The effect of neuroscience education on pain, disability, anxiety, and stress in chronic musculoskeletal pain. Archives of Physical Medicine and Rehabilitation, 92(12), 2041-2056.
- 解説: PNE(痛み教育)が、患者の痛みレベル、機能障害、不安、ストレスを有意に改善させることを示したシステマティックレビュー。
- Gatchel RJ, PengYB, Peters ML, Fuchs PN, Turk DC. (2007). The biopsychosocial approach to chronic pain: scientific advances and future directions. Psychological Bulletin, 133(4), 581-624.
- 解説: 慢性痛治療における「生物心理社会モデル(BPS)」の有効性と科学的根拠を包括的にまとめた重要論文。
- Moseley GL, Butler DS. (2015). Fifteen Years of Explaining Pain: The Past, Present, and Future. The Journal of Pain, 16(9), 807-813.
- 解説: 過去15年間の研究を総括し、「痛みの説明(教育)」がいかに治療効果を持つかを論じた論文。
