【File.01】
長距離ドライバーの坐骨神経痛
深夜の運転席、震える腰
「……っ、痛ッ!」
深夜の高速道路。ハンドルを握る手が、脂汗で滲みます。 アクセルペダルを踏み込むたびに、右のお尻から太もも、そして足先にかけて、まるで高圧電流が流れるような激痛が走る。 それが、40代のトラックドライバー、K様の日常でした 。
サービスエリアでトラックから降りようとしても、腰が固まってすぐに動けない。 這うようにしてトイレに行く自分の姿を他の人が心配そうに見ているのを感じるたび、Kさんは何ともいえない情けない気持ちと不安に襲われていました。
「このままでは、いつか事故を起こすかもしれない。でも、俺にはこの仕事しかないんだ」
整形外科での診断は「腰椎椎間板ヘルニア」。 医師からは「手術をするか、今の仕事を辞めるしかない」という、あまりにも残酷な二択を突きつけられていました。 痛み止めを飲み、湿布を身体中に貼り、騙し騙しハンドルを握る日々。しかし、限界は刻一刻と迫っていました。
ヘルニアは「真犯人」ではない?
Kさんが当院を訪れた時、その立ち姿にはある特徴がありました。 極端な「反り腰」です 。 一見、姿勢が良いようにも見えますが、腰の筋肉が岩のように硬直し、過剰に背中を反らせてロックしていたのです。
私はKさんの「ヘルニア」という診断名に、あえて疑問符を投げかけました。 なぜなら、Kさんは「運転中」や「洗顔時」には激痛を訴えますが、「歩いている時」や「お風呂上がり」は比較的楽だと言うからです 。 もし、飛び出した軟骨(ヘルニア)が物理的に神経を潰しているなら、24時間365日、どんな体勢でも痛いはずです。
痛みに「波」がある。 これは、構造(骨)の問題ではなく、機能(システム)のエラーである決定的な証拠です。
私は一つの仮説を立てました。 「この痛みは、トラック特有の『振動』から身を守ろうとした、脳の過剰防衛だ」と。
振動と酸欠のメカニズム
長距離トラックの座席は、常に微細な振動(全身振動暴露)に晒されています 。 この振動は、人体にとって大きなストレスです。 Kさんの脳(無意識)は、この揺れから腰椎を守るために、腹部深層の筋肉(大腰筋)に「固まれ!」と命令を出し続けていました 。
その結果、筋肉はコルセットのように硬くなり、その中を通る血管と神経を締め上げていたのです。 さらに、振動に耐えようと無意識に「反り腰」を作ることで、腰椎の後ろ側にある神経の通り道(椎間孔)を自ら狭めていました 。
つまり、痛みの正体はヘルニアではなく、「脳の命令による筋肉のロック」と「酸欠」でした。
「Kさん、あなたの体は壊れているのではありません。あなたを守ろうとして、必死に頑張りすぎているだけです」
脳への「安全宣言」
施術の目的は、凝り固まった筋肉をほぐすことではありません。 脳に「ここは安全だよ、もう守らなくていいよ」という信号を送ることです。
私は、Kさんのお腹の奥にある「大腰筋」に優しく触れ、呼吸に合わせてリリースしていきました 。 強く揉むことはしません。強い刺激は、脳にとって「攻撃」となり、防御反応を強めてしまうからです。
数回の施術を経て、Kさんの体から「過剰な緊張」が抜け落ちました。 ガチガチだった反り腰は自然なカーブを取り戻し、お腹の深層筋がポンプのように動き出したことで、血流が再開。あの不快な電流のような痺れも消失しました 。
「仕事」と「趣味」の再出発
8回目の施術を終えた日、Kさんは満面の笑みでこう報告してくれました。
「先生、実は先週末、久しぶりに大型バイクを引っ張り出してツーリングに行ってきたんです。 風を切って走るのがこんなに気持ちいいなんて、忘れてましたよ」
手術も、引退も必要ありませんでした。 腰痛の原因だった「振動」への過剰反応が消えた今、Kさんは仕事だけでなく、趣味のバイクツーリングまで楽しめる体を取り戻しました 。
もしあなたも、「仕事を辞めるしかない」と追い詰められているなら。 その決断をする前に、一度だけ私に会いに来てください。 あなたの人生のハンドルを、もう一度あなたの手に取り戻しましょう。
【読者の皆様へ:本記事の取り扱いについて】
本記事は事実に基づくフィクションです。筆者は医師ではありません。記事内容は医学的診断を代替するものではなく、「科学的エビデンス」に基づく情報提供を目的としています。具体的な診断や治療については、必ず医師の診察を受けてください。その上で、「病院では解決しなかった悩み」の選択肢としてお読みいただければ幸いです。
