【File.08】「顔を洗うのが怖い」魔女の一撃におびえる日々

【File.08】「顔を洗うのが怖い」

魔女の一撃におびえる日々

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見えない爆弾

「先生、顔を洗うのが怖いんです」

H様(30代男性)は、洗面台の前に立つだけで動悸がすると言います。 理由は、年に3〜4回繰り返す「ぎっくり腰」。 ふとした瞬間に襲ってくる激痛への恐怖から、H様は常にロボットのようにぎこちない動きになっていました。

「いつまた『グキッ』とくるか分からない。腰に爆弾を抱えているようで、仕事も手につきません」 コルセットを二重に巻き、そろりそろりと歩く姿は、30代とは思えないほど老け込んで見えました。

脳が作る「予期不安」

H様の腰を検査しましたが、筋肉や関節に大きな損傷はありませんでした。 それなのに、なぜぎっくり腰を繰り返すのか?

私が着目したのは、彼が動く「直前」の反応です。 H様にお辞儀をしてもらうと、体が動くコンマ何秒か前に、腰の筋肉が一瞬ビクッと硬直していました。

これは「予期不安」による防御反応です。 「痛くなるかも!」と脳が先回りして危険を察知し、筋肉を固めてブレーキをかけているのです。 しかし、アクセル(動こうとする意志)とブレーキ(恐怖による硬直)を同時に踏めば、車(体)は壊れます。 H様のぎっくり腰の原因は、腰の弱さではなく、この「過剰なブレーキ」そのものでした。

恐怖の解除コード

「Hさん、あなたの腰は弱くありません。ただ、脳が心配性すぎるだけです」

施術では、H様の脳を騙すようなアプローチを行いました。 「はい、私が支えていますから、絶対に痛くありませんよ」 声をかけながら、痛くない範囲で体を揺らし、脳に「安全だ」という情報を送り続けました。

徐々に、動く直前の「ビクッ」という硬直が消えていきました。 脳が「あ、動いても大丈夫なんだ」と学習し直した瞬間です。

日常を取り戻す

「怖くない……普通に顔が洗える!」

当たり前のことが、当たり前にできる喜び。 H様はコルセットを外し、今では趣味のフットサルにも復帰しています。

ぎっくり腰を繰り返す人の多くは、腰ではなく「脳のトラウマ」に支配されています。 その見えない鎖を断ち切れば、爆弾は消え去ります。

【読者の皆様へ:本記事の取り扱いについて】

本記事は事実に基づくフィクションです。筆者は医師ではありません。記事内容は医学的診断を代替するものではなく、「科学的エビデンス」に基づく情報提供を目的としています。具体的な診断や治療については、必ず医師の診察を受けてください。その上で、「病院では解決しなかった悩み」の選択肢としてお読みいただければ幸いです。

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この記事を書いた人

早坂 秀一のアバター 早坂 秀一 痛み回復センター東京代表/日本慢性痛施術者協会理事/慢性痛施術者・整体師(臨床歴13年)


もう治らない」と諦めかけているその痛み、実は体だけでなく「脳や心の緊張」が原因かもしれません。 私は、単に筋肉をほぐすだけでなく、対話を通じて不安を取り除き、あなたが本来持つ「回復する力」を引き出すことを大切にしています。


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