【File.20】「軟骨は消耗品」という大きな誤解
歩くのが怖い
「先生、歩くと軟骨が減るんですよね? だから、なるべく歩かないようにしているんです」
K様(70代女性)は、大好きな旅行も散歩もやめ、家に引きこもっていました。 理由は、整形外科医の一言。 「膝の軟骨がすり減っています。これ以上減らしたくなければ、無理に歩かないことです」
K様にとって、軟骨は「消しゴム」のようなイメージでした。 使えば使うほど減ってなくなる。だから、大切に保存しなければならない。 そう信じて安静にしていましたが、皮肉なことに、歩かない生活を続けてからの方が、膝の痛みと強張りは酷くなっていました。
軟骨は「スポンジ」である
私はK様に、「軟骨の真実」をお伝えしました。
「Kさん、軟骨には血管が通っていません。では、どうやって栄養をとっていると思いますか?」
実は、軟骨は「歩く時の圧力(加重と除重)」によって、関節液という栄養を吸い上げているのです。 例えるなら、水を含んだ「スポンジ」です。 スポンジは、押したり離したりしないと、中の水が入れ替わりませんよね?
「歩かない」ということは、このポンプ作用を止めること。 つまり、軟骨を守ろうとして安静にしていたことが、逆に軟骨を栄養失調にし、干からびさせていたのです。 痛みの原因は「すり減り」ではなく、動かさないことによる「栄養不足と拘縮」でした。
「医学の教科書にも書かれていますが、関節軟骨には血管がありません。 血液の代わりに『滑液』から栄養をもらっていますが、それを取り込むためには『断続的な圧力(ポンピング)』が必要不可欠です。 整形外科学の基礎(ソルターの法則など)でも、『安静は軟骨を栄養失調にさせる』というのは常識なのです。」
正しい負荷をかける
「軟骨を守りたければ、正しく歩いて栄養をあげましょう」
私は、K様の固まった膝関節と股関節に動きをつけ、関節液が循環するように調整しました。 そして、痛みの出ない範囲でのウォーキングを再開してもらいました。
「歩いた方が……痛くない?」
動き出した膝は、水を吸ったスポンジのように弾力を取り戻していきました。
消しゴムではなかった
今では、K様は友人とバス旅行を楽しんでいます。 「あやうく、大事にしすぎて膝をダメにするところでした」
体は、機械部品とは違います。 使えば減るだけの消耗品ではなく、適切に使えば修復し、強くなる機能を持っています。 「温存」という言葉に惑わされず、正しく使って一生の相棒にしていきましょう。
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