File.14 「沈黙の臓器」が叫ぶ時
〜ぎっくり腰の意外な真犯人〜
何もしていないのに
「先生、信じてもらえないかもしれませんが、本当に何もしていないんです」
倒れ込むように来院されたD様(30代男性)は、脂汗を流しながら訴えました。 今朝、顔を洗おうとしただけで、腰に電気が走ったような激痛が走り、その場から動けなくなったそうです。
重い物を持ったわけでも、激しい運動をしたわけでもない。 「原因がないのに、急に腰が壊れた」。その不可解さが、D様の不安を煽っていました。
お酒と腰痛の点と線
D様の体を見ると、右側の腰背部が特異的に盛り上がり、パンパンに張っていました。 そして、顔色は土気色で、目の下にクマがあります。
「Dさん、最近、お酒を飲む機会が増えていませんか?」
「えっ……はい。先週は忘年会続きで、毎日終電まで飲んでいました」
ビンゴです。 今回のぎっくり腰の真犯人は、筋肉でも骨でもなく、「内臓(肝臓・腎臓)の疲れ」でした 。
内臓に負担がかかると、その周辺の筋肉が反射的に硬くなる生理現象があります(内臓体性反射)。 連日の暴飲暴食で悲鳴を上げた肝臓が、隣接する腰の筋肉(大腰筋など)をガチガチに固めてしまっていたのです。 そこに「前かがみ」というトリガーが引かれ、限界を迎えた筋肉が痙攣(スパズム)を起こした。それが真相でした。
腰を揉まずに治す
「今回の治療ポイントは、腰ではなく『お腹』です」
私はD様に仰向けになってもらい、肝臓や腎臓の位置にあたるお腹を、優しく沈み込ませるように調整しました 。 腰には一切触れません。
「うぅ……お腹の奥に響きますね」
「はい、肝臓がむくんで重くなっていますよ」
数分後、お腹の緊張が抜けると同時に、背中の張りが嘘のように消えました。
「立ってみてください」
「……えっ? 立てる。痛くない!」
体からのメッセージ
D様は、自分の足でスタスタと歩いて帰られました。 「まさか飲み過ぎが腰に来るとは思いませんでした」と苦笑いしながら。
ぎっくり腰は、単なるケガではありません。 「これ以上、暴飲暴食を続けたら壊れるよ!」という、内臓からの命がけの強制停止シグナル(ストライキ)なのです。 原因不明の腰痛こそ、生活習慣を見直すチャンスかもしれません。
【読者の皆様へ:本記事の取り扱いについて】
本記事は事実に基づくフィクションです。筆者は医師ではありません。記事内容は医学的診断を代替するものではなく、「科学的エビデンス」に基づく情報提供を目的としています。具体的な診断や治療については、必ず医師の診察を受けてください。その上で、「病院では解決しなかった悩み」の選択肢としてお読みいただければ幸いです。
