【File.13】ティーカップを持てない恐怖
〜首の手術を回避せよ〜
壊れたお気に入りのカップ
「昨日、お茶を飲もうとしたら、手が勝手に……」
F様(60代女性)は、悲しそうに右手を見つめていました。 長年愛用していたティーカップを、握力が入らずに取り落として割ってしまったのです。
症状は、右首から腕、指先にかけての強いしびれ。 整形外科では「頸椎症性神経根症」と診断されました。 「首の骨が変形して神経を圧迫しています。握力も落ちているので、これ以上悪化したら手術を考えましょう」
首の手術。その言葉の響きに、F様は強い恐怖を感じていました 。 「失敗したら、全身不随になるんじゃないか」。 怖くて手術には踏み切れないけれど、このままでは日常生活もままならない。 F様は進退窮まっていました。
神経を絞めつける「筋肉のトンネル」
私はF様の首を触ってみました。 確かに骨の変形はあるかもしれません。しかし、それ以上に気になったのが、鎖骨の奥にある筋肉(斜角筋)の異常な硬さです。
首から出た神経は、筋肉の隙間という「トンネル」を通って腕に伸びていきます。 F様は猫背で首が前に出ていたため、この筋肉のトンネルが潰れ、神経を絞めつけてている状態でした。
つまり、しびれの原因は「骨の変形」よりも、「筋肉による絞めつけ」の割合が高かったのです。
驚くほどソフトな解放
「手術の前に、やれることはまだありますよ」
首周りの神経は非常にデリケートです。 強いマッサージは厳禁。私は、触れているか分からないほどのソフトな圧で、固まった斜角筋をリリースしていきました 。
「先生、そんなに弱くて効くんですか?」 F様は不安そうでしたが、施術後、腕を上げていただくと……。
「あれ? 指先がジンジンしない」
絞めつけられていた神経が解放され、血流が一気に巡り始めたのです。
もう一度、ティータイムを
5回目の来院時、F様は新しいティーカップの話をしてくれました。 握力もしっかり戻り、もうカップを落とす恐怖はありません。
「首の手術」と言われると、誰でも足がすくみます。 ですが、そのしびれの犯人は、本当に骨でしょうか? メスを入れる前に、筋肉の可能性を疑ってみる価値は十分にあります。
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