風邪をひいたからといって風邪の原因を調べようとする人はいません。
坐骨神経痛も2-3日で治るならば原因などどうでもよく、病院にも行かないかもしれません。
原因が気になったり病院に行くのは、なかなか治らない時、症状が重い時、何か大変な病気ではないかと不安になった時ではないでしょうか。
診断の結果、坐骨神経痛の原因を告げられても十分な説明が受けられなかったり、通院していても治らない時に疑問を感じて坐骨神経痛の原因を調べている人もいるかもしれません。
ここでは、坐骨神経痛の原因をわかりやすく3つのグループに分けてご説明します。
1. 坐骨神経痛の診断
坐骨神経痛の原因を特定(診断)するために、病院では問診、触診、画像検査、徒手検査などが行われます。
1-1. 坐骨神経痛の問診と触診
問診で痛みやしびれなどの症状、痛くなる場所(部位)、いつから痛くなったのかなどを確認します。
触診では痛みのある場所(部位)、筋肉の硬さ、冷えの有無などを直接触って確認します。
1-2. 坐骨神経痛の画像検査
レントゲン検査
レントゲン検査では骨の状態をみて骨折や骨の変形などを確認し ます。
また、骨と骨の隙間などから椎間板や軟骨の状態を推測します。
CT検査
CTもレントゲンと同じように骨の状態をみます。
さまざまな角度から骨の状態を確認することができるため、レントゲンよりも詳細に骨の状態を確認することができます。
MRI検査
MRIはレントゲンやCTではわからない骨以外の組織(神経、軟骨、靭帯など)の状態を診ることができます。
1-3. 坐骨神経痛の徒手検査
徒手検査とは、道具は使わずに関節を曲げたり伸ばしたりして行う検査です。
腰や股関節などを曲げたり伸ばしたりして痛みやしびれを誘発することで原因を見つけだす検査です。
坐骨神経痛の主な徒手検査
- Kempテスト
- 下肢伸展挙上テスト(SLR)
- 大腿神経伸張テスト(FNST)
- 下肢の徒手筋力検査 など
そのほかに、神経に障害がおきていないかを確かめるために腱反射を検査する場合もあります。
膝の下を軽く叩いて太もも(大腿四頭筋)の腱反射をみる膝蓋腱反射、アキレス腱を軽く叩いてふくらはぎ(下腿三頭筋)の腱反射をみるアキレス腱反射などがあります。
これらは坐骨神経を圧迫しているものを特定し、坐骨神経とは関係がない病気を除外するためのものです。
2. 坐骨神経痛の原因
坐骨神経痛の原因は主に3つに分けることができます。
主な原因は骨や軟骨、椎間板の変形などによるもの(根性坐骨神経痛)、筋肉によるもの(梨状筋性坐骨神経痛)、原因不明の坐骨神経痛の3つです。
そして、ごく稀に腫瘍や感染症など緊急な手術が必要となる坐骨神経痛もあります。
2-1. 根性坐骨神経痛(骨や軟骨、椎間板の変形が原因の坐骨神経痛)
骨や軟骨、椎間板の変形などにより坐骨神経が圧迫されて坐骨神経痛の症状がでるものを根性坐骨神経痛といいます。
2-1-1. 椎間板ヘルニア(腰椎椎間板ヘルニア)
坐骨神経痛の代表的な原因として椎間板ヘルニアがあります。
椎間板ヘルニアとは骨と骨の間にある軟骨(椎間板)がなんらかの原因で突び出している状態のことです。
この突び出した軟骨(椎間板)が坐骨神経を圧迫し腰痛や坐骨神経痛を引き起こすとされています。
2-1-2. 脊柱管狭窄症(腰部脊柱管狭窄症)
脊柱管狭窄とは、背骨や椎間板の変形、靭帯が厚くなるなど、様々な原因により脊柱管(神経の通り道)が狭くなっている状態のことです。
※背骨や椎間板の変形、靭帯が厚くなるなどは加齢による自然な現象で、60歳以上の成人では一般的にみられる身体変化です。
加齢による背骨や椎間板の変形、または他の原因で脊柱管(神経の通り道)が狭くなり坐骨神経を圧迫し腰痛や坐骨神経痛を引き起こすとされています。
その他にも、腰椎すべり症(分離すべり症・変性すべり症)変形性腰椎症などがあります。
しかし、本当に神経の圧迫と痛みは関係があるのでしょうか。
腰痛も昔はヘルニアや狭窄症など、背骨や椎間板の変形によるものとされていましたが、現在ではレントゲンやMRIによる画像所見と痛みは関係がないことが明らかになっています。
つまり、椎間板が飛び出しているから、脊柱管が狭くなっているからといって痛みの原因ということにはならないということです。
2-1. 梨状筋性坐骨神経痛(筋肉が原因の坐骨神経痛)
梨状筋による坐骨神経痛(梨状筋症候群)
梨状筋とは、仙骨(骨盤の骨)と太ももの骨(大腿骨)をつなぐお尻(臀部)の筋肉です。
お尻(臀部)の筋肉には梨状筋の他に、大臀筋、中臀筋、小臀筋などがありますが、梨状筋はこれらの筋肉のもっとも下(お尻の奥)に位置します。
いわゆるお尻のインナーマッスル(深層筋)です。
坐骨神経は、この梨状筋の下を通っています。
そして、この梨状筋が凝り固まると坐骨神経を圧迫し坐骨神経痛を引き起こすとされています。
MRIやレントゲンなどの検査ではみつけることができないので診断は徒手検査(痛みを誘発させるテスト)や圧痛(患部に圧力をかける)により診断します。
つまり、坐骨神経を圧迫するものが骨や軟骨ではなく梨状筋であるということです。
そもそも、神経の圧迫が痛みの原因であるという証拠はありませんが、仮に、筋肉による神経の圧迫が痛みの原因であるとするならば、なぜ筋肉が凝り固まるのかを知る必要があります。
2-3. 原因不明の坐骨神経痛
原因不明の坐骨神経痛とは、レントゲン、CT、MRIなどの画像検査をしても脊椎や椎間板の変形、脊柱管の狭窄もなく、梨状筋にも異常がみつからない坐骨神経痛です。
坐骨神経痛は、腰椎(腰の骨)や仙椎(骨盤の骨)から出る坐骨神経が圧迫されておこる症状とされていますが、坐骨神経を圧迫しているものが特定できないのであれば、坐骨神経の神経痛ではなく、坐骨神経の周囲痛ということになります。
腰痛の85%は原因不明と言われていますが、腰痛に限らず医学的に原因のわからない病気は数多く存在します。
MRIなど画像技術が進歩して見た目(画像上)の異常は発見できても症状と結びつかない場合も少なくありません。
老化現象、遺伝、ストレス…言い方は違っていてもこれらは全て原因がわからないという意味です。
なぜ、坐骨神経痛とストレスが関係するのか、なぜ、坐骨神経痛になる妊婦さんが多いのか。
なぜ、自律神経が乱れたりホルモンバランスが崩れると坐骨神経痛になるのか。
原因不明ということは、原因が無いということではなく、画像や数値に現れない原因が有るということです。
痛みが強い時は神経の圧迫が強く、痛みが弱い時は神経の圧迫が弱いのでしょうか。
その日によって椎間板が出たり入ったりするのでしょうか。
脊柱管が狭くなる日、広くなる日があるのでしょうか。
神経の圧迫されている場所によって症状のでるところ(部位)が変わると言われていますが、梨状筋によって神経が圧迫されている人は全て同じ症状なのでしょうか。
そもそも神経の圧迫と痛みは関係があるのかという根本の問題を明確にしなければ過去の腰痛神話と同じ道をたどるだけであります。
2-4. 坐骨神経痛になったらチェックしておきたい病気
ごく稀に腫瘍や感染症など緊急な手術が必要となる坐骨神経痛があります。
病院に行く目的は治すという他に、リスクのある病気を発見する、リスクのある病気の可能性を除外するという目的もあります。
危険な病気の可能性を無くして安心することも重要な治療のひとつと考えましょう。
坐骨神経痛の症状を伴う危険な病気
- 悪性腫瘍(がん)
- 脊椎感染症
- 馬尾症候群
- 椎体圧迫骨折
- 強直性脊椎炎 など
足に力が入らない、楽な姿勢がない、熱がある、体重が減ったなどの症状があれば早めに病院で受診することをお勧めします。
3. 坐骨神経痛の原因 まとめ
現在、坐骨神経痛の原因とされているものにはいろいろな説があり、一部(腫瘍や感染症など)の坐骨神経痛を除けば明確な原因というものがありません。
しかし、腰痛分野ではすでに、画像上の骨や軟骨の変形、腰への負担などは腰痛の原因ではないこと、感情が痛みを左右する鍵であることを膨大な調査研究により明らかにしています。
怒りや不安、悲しみなどの感情が脳機能の低下、ホルモンの分泌抑制を促し、痛みの慢性化、再発を引き起こすとしています。
腰痛と椎間板ヘルニア、狭窄症などによる神経の圧迫は関係ありません。
腰痛と坐骨神経痛は何が違うのでしょうか。
お尻の痛みと腰の痛みは何が違うのでしょうか。
痛みの原因をどう捉えるかによって治療法も対処の仕方も変わります。
もし、あなたの坐骨神経痛が治らないのであれば視点を変えてみてください。
もうすでに、神経の圧迫が痛みの原因でないことに気づいているのですから。